本のタイトル:不動産投資のお金の残し方裏教科書
著者の紹介:
石井彰男
経営コンサルティング会社で働きながら不動産投資を始め、6年で年間キャッシュフロー2000万円を達成。不動産投資開始直後は、無知な税理士に申告業務を頼んでいたが、多額の税金を支払うことになった経験から、自ら税理士資格を取得。不動産投資家→税理士の資格を取った珍しいタイプの投資家。
本の全体像:
印象としては、前半部分は不動産の基礎知識について、詳しく解説するというよりは著者の意見を基に、失敗しない不動産投資の辺りを解説している印象。後半は税理士知識を基に、不動産投資で得た利益を、様々な手法により税引きを抑えて手残りを残すノウハウを解説。
前半部分の不動産の基礎知識に関しては網羅的ではなく、ポイントを押さえて著者の考えを記載しており、後半部分も断片的にノウハウを記載しているという印象。不動産投資を行った後に、「意外と手残りが少ないな…」とか、「もっと手残りを増やす方法はないかな…」という考えを持つようなフェーズの上級者向け。
Takeaways:
1. 投資エリアの選定(予想人口推移を必ず確認する)
日本で不動産投資をしていくにあたり、必ず検討しなければいけないのが人口推移。その時に役に立つのが、人口問題研究所から公表されている人口推移表。投資エリアとしておすすめできないのが、下からランキングされている都道府県。(例:秋田県、青森県、高知県、山形県、福島県など)
また、人口密度は2000人/㎢以上の市区町村が基準。
2. 新米大家が一件目に狙うべきは「中古戸建」
戸建は供給数が少ない割に需要が高く、空室があっても早めに埋まる。利回り20%の物件も戸建であればあり得る。しかも小額から始められる。入居期間も平均10年と長い。また戸建の場合、アパートマンションと違って、入居者が自分で家の周りを掃除したり、多少の補修もしてくれたりする場合が多い。そのため経費率が低い。戸建で自主管理をすれば、賃貸経営がどういうものなのかという感触を養うこともできる。
最初からある程度の規模が欲しい人は、木造アパートを選択肢に入れるのもよい。部屋数が多い場合は自主管理ではなく不動産業者に依頼したほうが良い。
3. 不動産投資に役立つ超便利サイト
- 全国地価マップ:土地の評価額を算出する際に必須
- 土地総合情報システム:実際の土地の取引価格が確認可能
- 国立社会保障人口問題研究所:人口推移を確認可能
- 地域経済分散システムRESAS(リーサス)
- 見える賃貸経営:エリアごとの空室率、想定利回り、掲載物件数、人口、家賃相場など確認可能
- At home:実需向けでもあり、たまに割安な物件が掲載されており、不動産業者も確認している
- Suumo:上記同様
- 不動産ジャパン:サイトが使いにくいので掘り出し物が見つかったりする
- 土地代データ:土地の取引相場と上昇率がランキングで確認可能
- 日本地域番付:あらゆる地域のランキングがされているサイト
4. 収益価格と積算価格
不動産の世界で必ず出てくる言葉が、収益価格と積算価格という言葉。この2つは物件価格を決定する方法として使われるが、正直なところ、どちらが正しいという考えがあるわけではない。
結論を言うと、資産を拡大していくという点においては、積算価格を重視する方が得策だと考えている。理由は、銀行が積算価格を重視しているから。一般的に収益価格と積算価格を比較すると、積算価格の方が低く出てくる。不動産投資は銀行の融資を利用して購入するため、銀行が重視する積算価格に重点を置いて投資の想定を行う。
5. 1棟も買っていないのにマイホームなんて買うな!
「皆さん、マイホームは資産ですか?」という質問は、どこかで聞いたことがあると思う。結論は「資産ではない」。理由は収益を生み出さないから。そして残念ながら、マイホームのほとんどは本来の価格よりも高い価格で取引されている。そのため、マイホームを買った瞬間に不動産価値は下がり、マイホーム購入者の貸借対照表を作ったとすると、債務超過の状態になる。個人の貸借対照表が悪化することにより、銀行融資に不利に働く。
6. 指値が通りやすい物件
相続により売り急いでいる物件は指値が通りやすい。一般的に、相続が発生すると、相続が発生すると知った日から10カ月以内に、相続について申告をする必要がある。(詳しくは本には記載はないが、民法の話)そのため、急ぎ相続するか手放すかの判断が必要になってくるので、手放したいと判断した場合、売主としてはなるべく早く売りたいので指し手が通りやすい。
7. 賃貸需要を判断する5つのポイント
博打やギャンブルの要素を省き、成功する不動産投資をしていくという観点で見れば、入居者のつきやすいエリアの選定という考え方が重要。「どのような場所で買って、反対にどのような場所は買わないのか」を決めるためには、「賃貸需要のある地域」を選ぶ必要がある。(←当たり前)
ポイント:①周辺に生活基盤があるか、②近くに賃貸物件があるか、③駅からの距離はどうか(目安2km)、④災害危険エリアに指定されていないか、⑤地元の不動産業者の評判はどうか
⑤については、直接電話で地元の不動産業者に確認するのが一番。基本的な聞き方としては、「○○の地域で収益用の物件を探しているが、賃貸需要はあるか」、「○○地域の客付は最近はどうか」、「○○地域の入居率はどのくらいか」など。
8. 一番得する最適な出口戦略
不動産投資をやっていると、「出口戦略が大事」という話をよく聞くと思う。株式投資では最後は必ず売却で終了することになるので納得できるが、不動産投資においては必ずしもそうではないというのが私の意見。一時期出口戦略という言葉をよく耳にするようになったので、私も気になりシミュレーションをしてみた。今持っている物件を売った場合と、そのまま持ち続けて家賃収入をもらい続ける場合で計算したら、どう計算してもそのまま持ち続ける方が利益が多いし、儲かる計算になった。
9. 高収益のためのリフォーム法をマスターしよう
割安で物件を取得しても、リフォーム代が多額になれば苦労も水の泡。そのため、高収益で賃貸業を回していくことと、安くリフォームを仕上げることは、車の車輪の関係にある。私もセルフリフォームを実践しようと思い、3カ月間みっちり習いに行った。そこで気づいたのは、「自分で住みたいレベル」にまでリフォームする必要はないという事。賃貸物件を探している人は、そこまでのレベルを求めていない。リフォームを行う範囲は最低限で十分。
またリフォームを依頼するのであれば、管理会社経由ではなく、直接職人に依頼する。以前管理会社経由で見積もりを取った際は400万円だったのに対し、直接依頼した際の見積もりが80万円だったことがあった。そしてリフォーム職人と対等に話すためにも、サンゲツ、シンコールあたりで見本帳を請求し、手元に置いておくといい。職人と話す際も、見本帳を基に品番で会話をしたりすれば、「この人素人じゃないな!」となり手抜きせずにしっかりと仕事をしてもらえる。
10. 利回り基準
毎月のキャッシュフローをプラスにしてくれて、しっかりと利益を出してくれる物件の利回りはどれくらい必要かというと、個人的には表面利回りが新築で10%、中古で15%は必要と考えている。
また返済比率については、最低でも50%以下にする。返済比率が高いと 手残りのキャッシュフローが出てこないため。できれば30%以下にすること。返済比率が30%以下という事は、家賃収入に対する銀行返済額を30%以下にするという事。(例:家賃収入が100万円の場合、銀行返済金を30万円以下にする)
11. 例外なしに買ってはいけない物件
新築ワンルームマンション。
これは買う前から損失が出ることが確定している商品。(P91営業トーク例あり)
12. 金地金(きんじがね)の取引で消費税還付を受ける
金地金は買うときは消費税を払い、売るときに消費税を受け取ることができる。
(詳しくは理解できていないが、P218フローが記載されており、金地金を売り買いすることで、不動産物件購入時に発生した消費税を回収するというスキームが紹介されている)