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【感想_0019】『スタートアップ芸人』/ 森武司

本のタイトル:スタートアップ芸人

 
 
 
 

著者の紹介:

森武司
FIDIA株式会社代表取締役。Financial Times「アジア太平洋地域急成長企業ランキング未上場日本一」「ベストベンチャー100」受賞。
1977年.大阪生まれ。高校卒業後にNSC(吉本総合芸能学院)に入学。4年間お笑い芸人として活動し、吉本若手の大会決勝で野生爆弾と戦い30対0で負け、芸人を引退。そのまま4年間ニートとなる。
高校時代の仲間、芸人仲間からの言葉により背中を押され、ニートを辞めてヤマダ電機でアルバイトを始める。
通常販売員が1人1人に対して商品の説明をしていたところ、著者は芸人の経験から20人くらいに対し劇場の様に商品紹介をしたところ、店内売上トップとなり、更に社員にもスキルを共有したところ、アルバイト先のヤマダ電機京都八幡店の店舗売り上げが、新宿や池袋店を抑えて日本一になる。
その成功体験から、独立したいと考えるようになり2005年に幼稚園から小中高までの幼馴染西俊彦と会社を設立。
化粧品、人材派遣、広告、美容クリニック、コンサルティング等の様々な合計11事業を立ち上げ、現在そのすべてを黒字化。年商146億円。
「社会的弱者」から仲間と起業して成功するまでの歴史や、方法論を本書に記載している。
 
 
 
 

Takeaways:

1. 自己肯定感が育った両親の言葉

引きこもりを始めても、両親は何も責めなかった。母は「引きこもりもかまわん。ただ飯だけは一生に食べよう。」と言った。父は「お前は天才やから、いつか大物になる。」と繰り返した。父は子供のころから「俺はお前の才気に惚れている」と言ってくれ、塾の数学で1位を取った時には「数学ができるやつが結局一番賢い」とほめてくれた。また、父がもう一つ注目していたのは僕の「仲間力」だった。「お前のところには人が集まってくる。どこへ行っても自然とリーダーになる。」と言っていた。
 
 

2. ヤマダ電機社長の言葉 (スクラップアンドビルド)

当時のヤマダ電機の社長は創業者の山田昇さんだった。1983年にヤマダ電機を設立し、2005年には家電量販店日本初の売上1兆円を突破。山田社長の各店長への言葉の力が凄まじく、僕は初めて「本当に仕事のできる人」にあった気がした。一番印象に残っているのは「スクラップアンドビルド」という言葉だ。とにかく全国に出店し、10店舗作って6店舗が黒字、4店舗が赤字なら、差引2店舗が黒字という考え方。それなら赤字の4店舗を潰し、黒字の6店舗を残す。多くの経営者は赤字の4店舗を何とかして黒字化させようとするが、「それは時間の無駄」と断言していた。私が選んだ実力のある店長で黒字化できないのは、立地が悪いか、周辺住民に店舗がマッチしていないかのどちらか。だから黒字化店舗に精力を注ぎ、赤字店舗は思い切って潰す。
 
 

3. 独立・事業の始まり

ヤマダ電機での経験を活かし独立した際には、ヤマダ電機を含め様々な家電量販店の見切り商品を安く売ってもらい、それをAmazonで販売した。当時は競争者も少なく、3年後には年商10億円に成長した。ヤマダ電機に報告に行くと、「うちのネット通販を圧迫するレベルになっている」と言われ、「僕らが家電を売っていたら迷惑ですか」「迷惑じゃないけどライバルだな」と言われ。このままでは気まずいので新規事業を模索した。3年間の経験でEC通販のツボが分かってきた。儲かっているEC通販会社を100位くらいまで調べると、上位はサプリメントと化粧品を扱っていた。事業で貯めた資金を使い、今度は独自の化粧品を開発することにした。化粧品について何の知識もなかったが、奥さんの言葉によって「奥さんが喜ぶ本物のオーガニック製品を作る」と決めた。他社のクレンジングクリームのレビューを分析して、何千というレビューを読み漁ると、「肌荒れ」や「におい」といった言葉が多かったため、肌荒れしない、においの良い、そして当時少なかった「オーガニック」という要素を加えた商品を作ることにした。(その後化粧品工場に相談→20回試作テスト→1年半かけて「オルナオーガニック」というブランドのクレンジングクリームを作ると、Amazon、楽天で飛ぶように売れた)
 
 

4. 圧倒的スピード感 (9カ月で100製品)

続いてシャンプーとトリートメントを上記と同じように分析し開発。これも売れた。アマゾンの営業担当者からの提案で100商品を一気に展開することにした。「1年間で100商品」という有り得ない目標を掲げ、オーガニック、美白、アンチエイジング、ニキビ、メンズなどのジャンルの100アイテムを販売した。先ほど触れた「スクラップアンドビルド」の発想で、「当たった製品だけ残そう」と考えていたが、なんと95商品がヒットした。100製品の調査、企画、製造までに要した期間はわずか9カ月。1人20商品ずつ担当し、5人で行った。
 
 

5. すぐやる。夢の近くに行く

「いつか」じゃなくて「今」やる。僕はじっくり考えて始める事業はうまくいかないと思っている。半年も1年も頭の中でぐるぐる考えているより、すぐやった方がいい。「起業したい」と言いながら3年くらい準備したり勉強したりしている人がいるが、あまり意味がない。本気で起業したいなら、会社員を辞めてでも、まずアルバイトでもいいから夢に近いところで働く。給料は減るかもしれないが、減った分は経験代、勉強代だと思えばいい。
 
 

6. 最強の採用戦略

最強の採用戦略は、社長や役員と内定者でおいしい店に行って上座に座ってもらい、率直に「あなたに入って欲しい」と伝えること。
 
 

7. チェーン店と個人店の違い

巨大な公園が大阪にできる際に、カフェの公募があった。既に大手チェーンやホテルチェーン7店舗が応募していたが、我々も応募した。我々の会社は創業初期から退職者がいなかったが、創業初期メンバーの山本が「会社を辞めようと思っている」と話してきた。理由は「旅行先のイタリアで食べたピザで人生観が変わって、イタリアに行きたい衝動を抑えられないから」との事。ポジティブな夢なので送り出した。3年後にピザの世界チャンピオンになっていた。その後大阪に店を構えた山本のピザを、カフェで提供するという提案をした。提案後に「これがチェーン店と個人店の違いです。チェーン店ではここまでの空気感は出ない。異常な情熱をかけるから、異常な商品ができる。カフェもこうでありたい」と話した。カフェの公募は我々が受託することができた。
 
 

8. 失敗しないヘッドハンティングの極意 (顧問紹介・顧問派遣サービスの使い方)

失敗しないヘッドハンティングの極意。僕らの奥義は、顧問紹介・顧問派遣サービスに登録している若手と1カ月だけ契約する事だ。常時10人くらいと契約し、1か月仕事をして「良い」と思ったら、3ヶ月、半年と契約を延長する。この間に能力や人間性を見極め、「この人と仲間になりたい」と思ったら、顧問紹介会社から了承を経て人材紹介料を払い、ヘッドハンティングする。これが失敗しない採用の極意で、11事業すべてでうまくいっている。
 
 

9. 優秀な仲間を芋づる式に。ナンバーツーを見つける

優秀な人を仲間にしたい時は、優秀な人に「あなたの人生で一番優秀だと思った人を紹介して」と依頼する。当社の事業責任者の最初のミッションは、ナンバーツーを見つけること。ナンバーツーの活躍次第で業績は変わる。成功した企業の共通点は、ナンバーツーが優秀なことだと思う。本田宗一郎には藤沢武夫(HONDA)、井深大には盛田昭夫(Sony)、とにかく優秀な人をナンバーツーにつけるのだ。
 
 

10. トップのコンサルはどこまでやるのか

コンサル事業を立ち上げるタイミングで、僕は中川にこう言った。「デロイトで1番優秀な人って誰だった?」「岡田幸士さんですね。あの人はすごかった。」デロイトはそもそも精鋭部隊だが、その中で岡田さんはトップ3%の評価を勝ち取り、飛び級で昇進したスーパーエリートだった。コンサルティング会社の平均契約率は2割だと言う。10社から依頼があると平均的なコンサルタントは2社を獲得する。ところが岡田さんは依頼主から9社依頼される。契約率は9割だった。その後岡田さんはデロイトを辞め、100億円企業を目指して、自分の会社を立ち上げた。僕らのコンサルの仕事をとると、岡田さんにプロジェクトマネージャーとして入ってもらう。岡田さんはほんとに優秀だ。詳細は書けないが、異常なほどクライアントを調査している。クライアントの顕在的な悩みと潜在的な悩みの解決策まで提示し、こうすれば売り上げ利益が上がり、経費が下がると具体的に提示する世の中に落ちているありとあらゆる数値を拾ったのではないかと思う位。数字をきっちり詰めていきしご回打ち合わせしないとできないレベルの資料を2回目に持ってくる。
 
 

11. ハイクラス人材採用のマイルストーン

僕らも会社規模が小さい時はハイクラス人材は取れなかった。その時は学校の同級生や身近にいる人の中で「最高に優秀な人」に仲間になってもらった。年商30億位になった頃から、ハイクラス人材にチャレンジした。
 
 

12. 相手にワクワクの種を埋める

優秀な人材を会社に誘った時、僕らが共通して意識してきたことがある。それは面談の時に相手の胸の中にワクワクの種を埋めること。やがてワクワクの種は自発的に発芽し、彼らはワクワクしながら僕らの仲間になりたくなる。
 
 

13. 人を大切にする社長の言葉

「この人たちは、僕らの創業から6年働いてくれた恩人だから、雇用を守らんわけにはいかんでしょ。」橋本は驚いと顔をしていた。「雇用守ると言う意識を持った人材会社初めて見ました。」その後橋本は僕らの考えに共鳴し、人の辞めない人材会社を作りたいと1年かけ転職してきた。
 
 

14. 採用の公式 = 能力×情熱×人間性。人の能力とIQテストは相関性が高い

積極的に新卒採用に乗り出すと僕らの中で仲間になってほしい人の公式ができた。「能力×情熱×人間性」。この3つのどれかでもない。3つを同時に満たしている人と仲間になりたい。能力が高く、情熱があっても、人間性が最悪だと、会社の悪口に情熱を燃やす人が出てくる。だからどんなに能力と情熱があっても、人間性が最悪な人が採用しない。僕らは人の能力を測る物差しとして、IQテストと独自に使った能力テストを使っている。ある世界的大企業が仕事力を図るために、ありとあらゆるテストをしたが、IQテストとの相関性が1番高かったという。仕事ができる人を1位から100位まで並べると、IQとほぼ一致したと言うのだ。結局はIQに帰結する。だから、IQは採用の軸として持っていたほうがいい。僕らの会社でも分析すると同様の結果が出た。
 
 

15. 人間性を見極める質問

人間性を面接で見極める質問。能力があって、情熱があっても人間性が良くない人とは仕事をしないと言う採用軸ができたエピソードがある。以前面接をすると、能力は申し分なく情熱も高い。そこで入社してもらうことになった。ところが自分の考えと違うと断固「NO」を貫きテコでも動かない。Twitter上で職場の仲間について、「あいつは阿呆」「こんなことも知らないくせに、指示してくる」とつぶやいた。そこで僕が間に入り、「反対意見があったら、面と向かって言ったほうがいいかもしれへんな」と何回か言ったが、さっぱり変わらなかった。やがてその人は退職した。この時、能力と情熱だけで採用してはいけないという大きな教訓を得た。人間性をしっかり見て一緒に働きたいと思える人、仲間にだけ入ってもらおうと思った。面接の時に人間性を見極める質問がある。「なぜ前の会社を辞めたのですか?」「 1番大変だったプロジェクトは何でしたか?」と質問しながら、他責の理由が出てくるかじっくり観察する。「会社が悪かった。」「上司が悪かった。」「同僚に能力がなかった。」など、他責にする人や環境のせいにする人は絶対に採用しない。自分に原因があると考えるからこそ、自ら改善でき成長できる。失敗はしても良い。前向きに改善できる人とだけ一緒に仕事をしたい。
 
 

16. 配属は本人納得感と適材適所

仲間の強みと弱みを見極めるのは難しい。だがとても大切だ。僕らは採用を決めてもその段階ではどの事業部に配属するか決めない。その後面談なので、強みと弱み、性格を見ながら双方の話し合いで決めていく。その上で11事業部のうち、現在人材を必要している部署を説明し「〇〇事業がいいと思うけど、どうですか」と提案。本人がそこで働きたいと言ってくれれば最高だ。やりたい仕事に配属されると、通常の1.5倍位の熱量を出してくれる。中には、「私はどうしてもこの事業部に行きたいんです」という人もいるが、「こっちの方が向いているのでは」と提案しながらじっくり話し合うこともある。大学時代に英語のディベート大会で優勝したことある社員は最初はメディア事業を希望していた。「英語がそれだけしゃべれるなら海外からの問い合わせがたくさんあるアート事業はどうだろう。こっちの部署が向いてそうだけど、どう?」と聞くと、「確かにそうですね。そっちがやりたいです。」となるケースもある。配属に納得感があると大きな力を発揮してくれる。学歴や資格だけで配属するより本人の納得感と適材適所が一致するようとことん模索したほうが良い。これは11事業で共有している方針で、最初が肝心だと考えている。
 
 

17. 採用時はカルチャーを明確に示す

採用でも仲間と言うキーワードを前面に出し、「友達になりそうな人を採用します」と宣言している。するとこの言葉に共感する人が集まり、共感しない人はエントリーしてこない。だからカルチャーについて明確に表現することがとても重要だ。「当社は他社より給料が2万円高い」とアピールすると、お金の優先順位高い人が集まってくる。すると他に2万円高い会社があるとすぐに転職してしまうかもしれない。
 
 

18. 低評価レビューの対応はここまでする

低評価レビュー削除率が高い担当は優秀だ。中には「よく消せたな」と言うレビューもある。1回の連絡では消せなかったが、50回連絡したら消せたという執念の削除もある。以前、低評価レビューがなかなか削除されないことがあった。低評価レビューを書き込んだアカウントを調べると、ライバル会社で、その日に自分たちの化粧品に高評価レビューを数百も書き込んでいた。あまりにも不自然なので、アマゾンに連絡したがさっぱり対応してくれない。そこで真っ向勝負でジェフベゾスに「あまりにもおかしい」と連絡した。それとすぐ消えた。僕らの低評価レビューだけでなく、相手の高評価レビューも消え、不正レビューを繰り返したことにより退店になっていた。地道な雑草取りのような低評価レビューの削除という、KPIの上昇に命をかけると売り上げが上がる。大手はこんなはやらない。
 
 

19. 事業で抑えるポイントは3つのみ。「集客数」「成約率」「客単価」

実は事業で抑えるポイントは3つしかない。「集客数」「成約率」「客単価」だ。チラシ集客、ウェブ集客、紹介、立て看板、電車広告、テレビ広告、結局すべて「集客」に集約される。キャッチコピー、お客様の声、製品紹介、ベネフィット、権威性、ストーリーなど、全て「成約率」に分類される。アップセル、クロスセル、リピート、値上げ、値下げ、お一人様3個までなどは、「客単価」に分類される。全ての情報は、「集客数」「成約率」「客単価」の3つに分類されてしまう。それ以外の要素はゼロなのだ。100年前のビジネスも100年後のビジネスの3つしかないと断言できる。逆に言うと売り上げを作るのは、3つの要素しかないのだ。だから役員会議でも集客数を増やすのか、成約率を上げるのか、客単価上げるのかを徹底的に考える。
 
 

20. PJ開始前に「失敗」と「成功」の基準を定める

社内ではあらかじめこのプロジェクトは「こうなったら失敗、こうなったら成功」と決めている。こうなったら失敗というデッドラインを決めておかないと危険だ。危険水域でプロジェクトを止めるには成功と失敗と言う2軸の設定が必要だ。そこで、「こうなったら失敗」と数値化し、その数字を超えたら、どんなことがあろうとプロジェクト辞めることにした。
 
 

21. お土産禁止

社内ではお土産、誕生日プレゼント、バレンタインやホワイトデーなどの贈り物を禁止している。どこかに出張したら、部のみんなにお土産を買わなければと言う強制的な空気に苦しめられるは無駄だ。どの範囲まで渡すのか、お返しは何にしようと悩むのも無駄だ。会社として禁止にすれば、お互い楽な環境ができる。もう一つのルールは取引先からもらったお土産は休憩室においてシェアすること。営業など取引先との関係がある人だけが贈り物をもらうのは良くないから、基本的にみんなでシェアする。
 
 

22. 何も言わず、理解を示す

僕は人づてに「仕事で悩んでいる。揉め事があった」と聞いたら、直接本人に食事に行こうなどと誘うことが多い。居酒屋に行き、最近「元気ないやん」と耳を傾ける。前もって上司との相性が悪いと言う情報を知っていることもあるが、こちらからあえて何も言わない。いろいろな話を聞き、悩みの核心に迫りながら「なるほどな」と理解を示すことにしている。僕は解決できない問題はほとんどないと思っているから、じっくり話を聞いた後に「これやってみる?」と具体的な解決を提案する。その点でも食事会は最強のコミュニケーションの場だ。問題解決の場、ガス抜きの場として大いに機能する。関係性の深さと食事に行った回数は比例する。信頼が積み上がると何かあったら会って話せばいいと言う関係になる。
 
 

23. 悪口・陰口を言わない

FIDIAの行動指針を作成するときに、石田が強く望んだのが「陰口や悪口を言わないこと」だった。石田は2000人以上員を引っ張っているが、彼に寄せられる絶大な信頼は、石田が悪口や陰口を言ったのを1段も聞いたことがないからだ。そこで行動指針に盛り込むべきだと判断した。ただ「嘘」や「悪口」などのネガティブワードではなく、英語で「No lie, No hate」、翻訳は宝塚音楽学校の教訓であり、宝塚歌劇のモットーである 「清く、正しく、美しく」のオマージュで、「清く、正しく、輝かしく」とした。それから役員同士も絶対に悪口陰口を言わないと決めた。すると次第に自信を持てるようになった。
 
 

24. 失敗した従業員への対応

「失敗のシェアかっこいい」と考えると、組織は伸びていく。失敗は良くないが、起きてしまったら仕方がない。むしろ失敗を隠したり、嘘でごまかすほうがよくない。たとえ小さくても失敗を隠したり嘘をついたりした時は、1対1できちんと叱る。失敗を隠さない組織を作るには、失敗した報告を咎めないことだ。感情的に怒ったり、降格研究処分にしないことが重要。失敗を追求し始めるとみんなが失敗を隠すようになる。
 
 

25. ルールの分からないスポーツは応援できない。理解して初めて応援できる。

僕は世界で1番奥さんに仕事の話をする。経営者は、突然の呼び出し、緊急電話、休日出勤などどうしても断れないスケジュールの変更や深夜までの飲み会などを経験する。その時自分自身に思う事は「俺よく頑張っているな」だ。それと同時に頭をよぎるのは「奥さんに怒られるかもしれない」。奥さんが「家族のためにいつもありがとう。今日はゆっくり休んでね」と言ってくれたらどれだけ救われるか。そう思った人は家族や恋人と仕事への理解を今日から深めよう。ルールのわからないスポーツは応援できない。ルールを熟知し理解して、初めて応援できる。何をやってるのかさっぱり分からないのに、応援しろと言われても無理なのだ。
 
 

26. クレーマーの有効活用

モンスタークレーマーは大応援団長になる可能性がある。モンスタークレーマーは伝える力や情熱が高く、商品サービスのマイナス面があるとこばかりに突っ込んでくる。だが、そんな人たちに誠実に対応する企業は少ない。ここでとことん誠実に対応すると、今度は商品サービスのプラス面を大々的に発信してくれるようになる。
 
 

27. 短所を伝える理由。取引先 ← 社長 → 社員

取引先にあえて社員の短所を伝える理由。大きなプロジェクトが始まる前、僕らは取引先の事業責任者を交えて会食する。その時に社員の長所・短所を共有しながら、何かあったら僕らは全力でバックアップすることを伝える。長所はともかく個人の短所は、会議室では話しにくいので、食事の席で少しユーモラスに伝えるのだ。例えば「この人は報連相がちょっと苦手なので、気になったことがあったら聞いてやってください。それ以外は完璧にやるんですが。」といった具合だ。本人もその場にいるので「ちゃんとやります」と言うが、あえてこう言うことで社長の僕が弱点として認識していることを意識し、徐々に改善するようになる。相手もあらかじめ聞いておけば、あまり腹立たない
 
 

28. 奢らず、割り勘

重要な取引先こそ、絶対に割り勘にする。奢ってしまったら、もう友達ではない。「手加減しませんよ。だって僕ら友達じゃないですか。」とわざと言いながらプレイする。
 
 

29. 商品開発の進め方

第一章で化粧品開発の話をしたが、僕らのような素人がこれまでにないオーガニックの化粧品を作ろうと言うのだから本当に大変だった。いくつもの工場に連絡したが、あまりにロットが少なく相手にされなかった。断られて疲弊し、もう無理かと思った時、ある化粧品工場が「小ロットからやってみようか」と商品開発に協力してくれた。僕らは怒られるんじゃないかと思う位、何度もテストを繰り返したが、化粧品工場の人たちは黙ってテストに付き合ってくれた。回数を重ねるうち、先方の研究員も「良いものを作りたいと言う気持ちが伝わりました。ここまで来て妥協したくないですよね。最高のものを作りましょう。」と言ってくれ、17回18回目には自主的に成分を調整してくれた。20回目でついに思い通りの化粧品ができた時は全員で感動した。その間、化粧品工場の社長や役員の方々と何度もご飯に行った。「君たちの情熱に惚れたわ。大手でもこまではこら終わらないよ。商品に期待しているよ。」と社長や役員たちの心を動かした。その商品はついに、その化粧品工場の中で1番売れる商品になった。今でも取引が続いているし、定期的に食事会に行っている。
 
 

30. 社長の仕事

ある時、役員の西にこんなこと言われた。昔の森はどちらかと言うと自分で何でもやるタイプだった。でもある時から人に任せるようになった。確かに会社を作って、しばらくの間も自分で何もかもやっていた。多少の頭の良さと長時間労働で何とかなった。社長の能力が社内で1番高く、社長がバリバリ仕事をしているのが会社のあるべき姿だと思っていた。でもそれは大いなる誤解だった。
 
 
西が入社した後、西野マネジメント能力に圧倒された。マネジメントを自分の仕事ではないそう思わされた。
 
 
僕はもともと営業に自信があった。だが、橋本は信じられない位の営業マンだった。どんどん人の懐に飛び込み、取引先にまめに連絡して可愛がられる。これは絶対叶わない。営業橋本に一任しようと悟った。
 
 
中川は僕に足りないもの全て持っていた。僕が夢を語ると、それを着実に形にしてくれた。業務の推進は中川に任せようと思った。
 
 
中島は経理、財務について、僕よりもはるかに能力が高く比べようもなかった。
 
 
僕はキーパーソンが入社するたびに負けを認めてきた。創業時には社長が全分野で戦闘力が高い。でもどんどん組織が多く大きくなってくるのに、そのままだといけない。
 
 
社長の役割は自分より高い能力の持つ仲間を集めること。ある分野で突出した人材を採用やヘッドハンティングで集める。その分野で負けを認めて信じて任せる。社長に必要なのは「仲間に任せる力」なのだ。
そして全て任せても、最後の責任は社長が持つ。
 
 
中川がある時、こういった。「森さんは尻ぬぐいをできる覚悟を持っている。」
 
 
社長が逃げたら元も子もない。時にはとんでもない失敗することもあるが、最終責任を取るのが僕の仕事だ。
「しゃーないな」と言いながら、失敗した社員の地位と名誉を守る。仲間たちは、僕が責任を取る姿をしっかり見て、「次は挽回するぞ」と肝に銘じる。
 
 
 
 

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