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【感想_0027】キーエンス解剖 / 西岡杏

本のタイトル:キーエンス解剖

 
 
 
 

著者の紹介:

西岡杏
日経ビジネス記者
 
 
 
 

Takeaways:

1. キーエンスの特徴まとめ

1. 潜在ニーズの汲み取りと具現化
 a. 広くて敏感な網 (面)
 b. 網に掛かれば即反応し深堀 (線)
2. スピード
 a. 客先で即時対応 (入口)
 b. 当日即納 (出口)
 
 
なぜ1&2が出来るのか
• 営業の徹底教育 (ソフト面)
 ○ ロープレ
 ○ 裏のニーズ
 ○ 目的意識
 ○ 外報
• 分担した役割とスムーズな連携 (ハード面)
 ○ データ蓄積システム(SFA)
 ○ ノウハウ共有
• 最小の資本で最小の付加価値を生む仕組み
 ○ 粗利8割
 ○ 開発費用回収12カ月
 
 
 
 

2. 「他にお困りの方はいませんか?」

キーエンスの営業担当者が、営業後に必ずする質問。新規顧客開拓の糸口を探す
 
 
 
 

3. 「○○さまは最近どこにいらっしゃるんですか?」

購買や投資判断に関わるキーパーソンの動向を確かめる
 
 
 
 

4. 商品

商品の約7割は「世界初」
 
 
 
 

5. 粗利8割

キーエンスの商品開発では、売上高から原価を引いた粗利を8割にすることを目安としている。「原価の削減も頑張るが、基本的には付加価値を上げることに重点を置いている」
 
 
 
 

6. ロープレ

顧客との商談のシミュレーション。上司や部下、同僚と2人組で実施。10~15分ほどで短く。毎日歯を磨くように必ずやる。フラットの風土を持つキーエンスらしく、上司からの指導だけでなく、部下からの改善の提案も普通にある。ロープレによりまずは型を身に付ける。OB曰く、入社して最初の1年半は毎日やった。「数をこなさなければ質が生まれないとキーエンスで学んだ。数を打つことは全く苦にならなかった」
 
 
 
 

7. 外報(外出報報告書)

記入は商談から5分以内:時間がたつと、主観が強まったり、細かいことをかくのがおっくうになる。商談で起こった事、気付いたことをすぐに書き留めておけば、顧客が何を求めているのか見えやすくなり、次の戦略を練るのにも役に立つ。1日の最後には、外報を使いながら、商談の状況と今後の方針について上司とすり合わせる。当日の成果だけではなく、予め書き込んでおいた翌日以降のミッションや訪問先についても打ち合わせをしておく。記入内容は、どこを訪問し、誰にあったのか、反応はどうだったかなど。
 
 
 
 

8. 負けず嫌い

キーエンスには「負けず嫌い」な社員が多い。キーエンスは採用のタイミングで性格診断を複数回実施する。
 
 
 
 

9. ハッピーコール

営業担当の上司が顧客に対して直接フォローの電話を掛ける事。部下がきちんと顧客のニーズを聞き出せたのか、顧客にとって満足のいく提案が出来たのかなど確認する。
 
 
 
 

10. 現場で解決

キーエンスは営業担当者が商談中即時に顧客の要求に対応できるよう、営業担当でも簡単なプログラミングが出来る。他社は「担当部署に一度確認します」となる。現場ですぐに解決できる。
 
 
 
 

11. 網上に広範囲を網羅

キーエンスの営業担当者は全国を網の目の様にテリトリーで区切り、9つある事業部の中の自分の担当の製品を営業する。
 
 
 
 

12. 裏のニーズ

顧客が言うニーズと裏のニーズは分けて考える。顧客が欲しいものをただ渡すのではなく、なぜこれが欲しいのか、これを得ることでどういう成果が欲しいのか、それならばこっちの方が効率が良いのではないか、と裏のニーズを必ず探る。この真のニーズは顧客も気づいていないことが多い。「顧客の欲しいものは作らない」という価値観。
 
 
 
 

13. 価値の最大化を優先

時期を優先して中途半端な価値の商品を提供するより、価値の最大化を大事にする。場合によっては商品のリリース時期を遅らせることもある。
 
 
 
 

14. 目的

外出一つから目的を問う。
 
 
 
 

15. 必要な機能や性能を絞り込み、尖らせる

キーエンスが商品企画を練る際に大事にしていることに、「引き算」があると指摘する。一般的なメーカーでは、競合商品とし王を比較しながら「他社にはないこの機能がある」「寸法がこれだけ小さい」といった部分で差別化を図ることが多い。全ての項目で競合製品を上回る「チャンピオンスペック」を目指しがちで、その結果、設計や製造の難度が上がり、開発期間も長期化、原価も高くなる。一方井キーエンスは、事前に丹念に調べた顧客ニーズを基に、必要な機能や性能を絞り込み、そこを徹底的にと尖らせる。30社程度の顧客へのヒアリングを繰り返し、その中で何度も出てくるニーズを3~5個程度にまとめていくと、対象とする顧客の8割が納得する商品になる。出来上がった商品は特徴が明確で売りやすく、商品全体ではコストダウンが見込める。キーエンスの商品企画担当は、とにかく現場に出向き、現状を調査する初歩の基本動作を繰り返す。最低数十社、多い時には100社の顧客を訪ね、ラインに入り込んで顧客の隠れた本音を聞いて回る。
 
 
 
 

16. 回収は12カ月

キーエンスでは開発費を12カ月で回収するように求められることが多い。24カ月まで許容する場合もあるが、その場合は相応の理由が必要になる。
 
 
 
 

17. 役割分担を徹底

キーエンスがなぜうまくいっているのか。その理由の1つに役割分担がある。営業の人は営業の事だけをやればいいように、仕組みがしっかりしている。伝票の作成や配送の手配などにもエキスパートがいる。営業担当者がそのあたりも担当している会社に比べると、モノを売ることにフォーカス出来るキーエンスは有利かもしれない。「集金を確実にこなして初めて一人前」と言われることが多い営業だが、キーエンスの営業は基本的に他社の営業のような集金や納品の立ち合いはしない。
 
 
 
 

18. 即納を守るために在庫を積む

キーエンスは受注生産ではなく在庫を積む。それは直近の利益よりも当日出荷が重要だという絶対的な優先順位があるから。キーエンスだったらすぐに持ってきてくれるという、他社にはない価値を守り続ければ、商品の売値を維持でき、それが長期的な利益向上につながる。ただし全商品の在庫を持っておくと言っても、簡単ではない。売れない在庫を抱えれば利益率の大幅な悪化を招く。キーエンスでは、需要予測、原材料の調達リードタイム、生産リードタイム、それらを緻密に考慮しながら在庫を切らさない体制を作っている。10万のコストをかけてでも、1万円の商品の即納を守る。
 
 
 
 

19. まずは自分で作る。そのあと量産は委託

工場を持たないファブレスのキーエンスだが、実はキーエンスには工場がある。(キーエンスエンジニアリング)主に商品の修理や解析、製造装置の設計、開発した商品の試作量産を担っている。キーエンスの商品の1割程度を製造し、量産方法が確立した残りの9割の製造を協力会社に依頼している。製造プロセスとそのコストを知ることで、ただ単に製造を委託するだけでなく、協力会社の監視の役割を果たしている、
20. キーエンスの商品の製造には、パート従業員の意見まで商品に反映する。また各工程の目的を社員だけでなくパートにも必ず伝える。そうするとその工程を担当するパートが別のやり方を提案してくれることもある。より良い手段が見つかるチャンスを捨てる必要はない。
 
 
 
 

21. 根幹

最小の資本で最大の付加価値を上げる。
 
 
 
 

22. 営業利益の15%を還元

キーエンスは営業利益の一定割合を全従業員に業績賞与として還元する。この割合をキーエンスは公表していないが、「15%程度だった」とOBは証言する。会社全体の業績が上がれば、一般社員の賞与も大幅に上がる。だからこそ一人一人が自分の結果だけでなく会社全体の業績を考えるようになる。社員全体が経営に参画する意識を持って自主的に取り組んでいるのはキーエンスの強みだ。
 
 
 
 

23. 営業ナレッジは社内で隠さず共有

営業ナレッジを共有する社内サイトがある。どういうパターンで受注できたのか、どういう商品の使い方が顧客に好評なのかといった情報を、営業担当者が書き込んでいく。営業担当者の成功横展開する狙い。ノウハウの積み上げがない若手社員が「ここが分からない」と質問すると、全国のベテランが回答してくれる。書き込むごとにポイントがたまり、ポイントが多い人を表彰するような機会もある。ノウハウの共有を仕組化している。「情報の囲い込みをやっているとダサいと周りに思い込まれる」とOBは言う。「ナレッジの共有はかっこいい。だからみんなする」という文化がある。これはリクルートも同様。
 
 
 
 

24. 内部監査

キーエンスには内部監査部隊がいる。内部監査は何種類かあり、「営業監査」や「海外監査」などがある。監査を担当するチームは、定期的に抜き打ちで現場を見て回る。これを聞くと「監視社会」の様だが、「結局は秩序や文化の維持が目的だ」とOBは指摘する。キーエンスではすべての行動を基に個人の施策、事業部の施策、全社の施策を決める。もし虚偽の報告があれば誤った経営判断をしてしまうことになるため、ありのままを報告することが重要だった。キーエンスという会社は、噓をついた人が得をするのをものすごく嫌う。それは無理をして馬車馬のように働けという事ではなく、体力的につらい時に仮眠をとる場合などは、それをしっかり記載すれば問題なく、事実を正しく申告すればよいという事。社内の仕組みは「性弱説」に基づいている。人は弱いものだという前提に立った仕組みを作っている。
 
 
 
 

25. 辞めるべきものは辞める

辞めたほうがいいことはしっかりと言える仕組みがある。1年に1回、社員が自らの気づきを提出する機会がある。その記入フォームに「新しい気付き」と同様に、「辞めるべきこと」を選択できたという。どんなにいい仕組みを作っても、時間とともに社会情勢やトレンドが変わり、時代に合わなくなってしまうことがある。過去からやってきた仕組みをそのままにせず、本質を考えながら改善点を考え、現状で難しければ新しい仕組みを作っては辞める。新陳代謝。
 
 
 
 

26. 客と営業は対等。そのためには勉強をし続ける。

キーエンスではお客様と営業マンが対等な関係。でもお客様から見て営業が対応だと思ってもらえるように、お客さんがびっくりするほどの課題解決型の提案営業をする。例えば皆さんが風邪をひいて、医者に行く。そこで診断されて処方箋をもらう。そこで診察料を払うが、「値引しろ」とは言わないと思う。ありがとうございますと感謝して支払うはずだ。一流の五社は人の命を救うために常に最新の医療知識を学び、習得して、最善の治療をする。我々が目指す営業はそういう事だ。なので、従来のような飛び込み営業や、接待などの顧客の情に訴えて買ってもらうという営業がしたい人は、キーエンスに来ないでくれ。頭を使う営業。常に勉強し続けることをいとわない人は、そのまま残って入社テストを受けて欲しい。(会社説明会)
 
 
 
 

27. 給与は日本一

うちはメーカーではトップクラスの給与を支払っている。30過ぎで年収1000万に手が届く。といっても特別な給与体系を採用しているわけでもない。人を集めるには仕事ややりがいも大切だが、やはり数字に表れる待遇が良くないといけない。将来は株価だけでなく、給与も日本一にしたい。(91年「日経ビジネス」滝沢氏インタビュ-)
 
 
 
 

28. カリスマは要らない

「自分はカリスマではない。」滝沢氏が「カリスマ」を良しとしない考え方を持っていたのは、カリスマの存在が革新の妨げになる可能性があるからだ。「創業時から自分がいなくて会社が回るようにずっと考えてきた。よく企業の創業者が会社は子供のようなものだというが、私自身そんな気持ちは全くない。いつ引退するかも決めている。自分の息子に会社を継がせるつもりはない。」この言葉通り、時沢氏は社長の座を2000年に譲りった。
 
 
 
 

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